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アパレルの店頭に求められる役割

 SHEINやTemuなど中国発ECが広がりを見せ、診断系コンテンツも一般化するなど、若年層の購買行動には大きな変化がみられている。SNS検索や口コミから“買うものが決まっている"、骨格や顔タイプに合わせて“自分に合うアイテムがわかっている"など、接客が求められないケースも。例えば「店員に声をかけられる」など、多くの人が経験している買い物中の苦手意識もあるなか、服選びの価値観はどのように変わっていくのか? Z世代の若年層に向けて、デジタル技術を駆使したリアル店舗『AO+(アオヤマプラス)』を展開している青山商事に話を聞いた。

【写真】ノー接客で、AIに仕事服を選んでもらった結果

■声をかけられたくない、買い物あるあるの一方で「後押ししてほしい」ニーズ

 SNSでの口コミ、自分と同じような体型(身長・体重)のレビュー、試着動画の普及などによって、「店に行かずとも買える」環境がスマホを持つ人にとっては一般的に。洋服を買う場所は店頭のみだったのに対し、「SNS→EC→最終確認の店頭試着」という形式に移行している。「自信を持って買い物に行ける服がない」「店員による接客中の声掛けが苦手」など、店頭で相対することに負担を感じたことがあるという人も多いのではないか。

「アパレルの店頭に求められる役割が変わってきている」と話すのは、青山商事の木下俊之氏。

「以前から“店員に声をかけられたくない"は、全世代に共通する買い物あるあるだったと思います。特にZ世代以下の若い世代はその傾向が顕著にあらわれている一方で、「買い物の後押しをしてほしい」ニーズも一定数あり、二極化していると感じています。

 情報はネットで全て調べられる時代なので、口コミやレビューを参考にして、ECサイトで買える人もいらっしゃいます。でも“あとひと押し"がほしい人、商品を前にして「本当に欲しいのか」最後の意思確認をしたい人もいらっしゃる。特に仕事服やオケージョンなどルールがある場合は、その専門知識を店員から補いたいニーズがある。店頭に求められる役割は大きく変わっていて、最後のひと押しこそも、リアル店舗の価値だと思っています」(木下氏)

■若年層の買い物にフィットさせるためには?“洋服に目がいかない"従来店舗の課題が顕在化

 Z世代を対象にオープンした、同社の新店舗「AO+(アオヤマプラス)」は、声をかけられる・かけられないも含めて「自分で選べる店」であることがコンセプトとなっている。

 店内の入り口付近には“クイックエリア"として、デジタルでの採寸ができ、セルフでサクッと購入するための導線を敷いている。店内奥には“コミュニケーションエリア"を置き、必要なときに店舗スタッフに相談ができる設計に。「声をかけない」「必要であれば専門的な知識でサポートする」という2段階による選択肢を与えることで、若年層の購買によりフィットできるのではないかと同店で店長を務める田中雅大氏。

「接客を受けたい人もいれば、受けたくない人もいらっしゃる。店頭で接客していても、“選べる環境"が大切だと実感します。自分が着て恥をかきたくないとか、きちんと正解を知りたいといった気持ちを大切にすることで、買い物にも寄り添うことができます」(田中氏)

 今回の新コンセプト店舗を設計したことで、従来の「洋服の青山」が抱える店舗の課題感も見えてきたという。従来の店舗では商品のPOPが什器に重なるよう設置され、服に目が行く前段階で情報量がとても多く、商品の良さが埋もれやすくなってしまう面もあった。そのため、新コンセプト店舗では什器上のPOPを極力排除し、デジタル化にしたことに加え照明や什器を未来的に統一。ユーザーの視線を商品に向ける設計を採用している。

「POPが多すぎると、どうしても商品よりも先に情報に目が行ってしまいます。しかし本来は“商品そのもの"が最初に目に入る設計にしなければスマートな売り場とは言えません。「AO+(アオヤマプラス)」は小規模店舗であるため、POPを少なくしている経緯もあるのですが、今回の売り場づくりを既存の「洋服の青山」にも生かしていきたいと考えています」(木下氏)

 新店舗で提供するデジタル採寸は、実際に手動で測るときとほぼ同じサイズを提示するほど、精度が高いという。デジタルで自分に合うサイズや系統まで分かるからこそ、「店員に求められるのは、単なる接客ではなく、“深い知識+デジタル理解"になってくる」と木下氏。

「今後は、スタッフは少人数で十分という店舗も出てくると思います。そしてマナー、洋服のトレンド、診断コンテンツにまつわる知識など、より広く深い知識を持つスタッフの育成が重要になっていくでしょう。人でないと、店舗に立つことはできない時代になっていくでしょう」(木下氏)

■仕事服の多様化、スーツ人口減少も「入学式や就活だけではない役割や価値を広めていきたい」

 新店舗ではオープン以降、想定を超えるスーツやオーダースーツを求める来客があったという。これによりユーザーの「スーツの専門知識を持つ人の接客を受けたい」「リアルの場で最終確認をしたい」というインサイトが明確に見えたといえる。

「洋服の青山という文字を大々的に出してはいないのですが、スーツやオーダースーツを求める来店が想定よりも多く、正直驚きました。『AO+』で体験をして、逆に“洋服の青山"を知るという方も出てきています。仕事服自体が多様化して、スーツを着る人も少なくなっているなかで、入学式や就活だけではないスーツの役割や価値を新コンセプト店舗を通じて広めていきたいです」(田中氏)

 今後の展開として、まずは都市部を中心に移転や出店を含め、展開を予定している。その中で洋服の青山の既存店も「AO+」へ展開した方が良い店舗も出てくれば転換を検討したいという。

「先ずは50店舗は作りたいという思いがあります。これからは、それぞれの都市の客層に合わせて、同じチェーンでも“違う顔"を持つ時代になってくると感じています。当社は仕立て屋として、接客を大事にお客様とコミュニケーションをとってきました。接客が得意であるからこそ、接客を嫌がる方の気持ちも分かります。買い物へのさまざまな価値観を持つ方に対応し、新たな店舗のかたちを探る。今までの青山に“選べる買い物体験"をプラスし、知らなかった、意外と良いね、青山!という体験を提供していきます」(木下氏)

(提供:オリコン)
12月17日 9時20分配信
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