鹿児島県警の前生活安全部長逮捕から1ヵ月 捜査の行方は


 鹿児島県警の、前の生活安全部長の逮捕という衝撃的な出来事からまもなく1ヵ月。スタジオには田上記者です。

 一連の不祥事に内部情報の流出と、県警の問題は鹿児島に留まらず、全国の様々な立場の人々から深刻な事態と受けとめられています。

【野川明輝本部長】
 非違事案が相次いでいる要因として、コロナ禍における社会情勢の変化を受けてコミュニケーションが疎かになっていることがやむなしとして人間関係が希薄になったことなどにより、これまで講じてきた対策が浸透しきれず、非違事案に組織として把握できていなかったことが問題であると考えています。

 遡ると、2020年以降、鹿児島県警で現職警察官の逮捕者が出なかった年はありませんが、去年から今年にかけては1年2カ月の間に5人の現職警察官が逮捕されています。野川明輝本部長は、その理由を「コロナ禍におけるコミュニケーション不足」によるものと議会で答弁しました。

 県警の前の生活安全部長が捜査情報を漏らしたとして逮捕されたのはその翌日。
本田尚志被告(60)は勾留理由の開示を求めた手続きの法廷で、枕崎署の警察官が盗撮事件の容疑者に浮上した際の事として、県警のトップ、本部長を告発しました。

 「野川本部長に指揮伺いをしたが、最後のチャンスをやろう。泳がせようと言って、印鑑を押さなかった。本部長が警察官による不祥事を隠ぺいしようとする姿にがく然とし、失望した」

【野川明輝本部長】
 「私が隠ぺいの意図をもって指示を行ったということは一切ございません」

 警察庁は「客観的にみて、本部長の隠ぺいの指示はなかったことが明らか」とする一方で、「迅速適確に行われなければならないという、捜査の基本に欠けるところがあった」として一連の不祥事について、再発防止を指導する特別監察に入っています。

 本部長が隠ぺいを否定し、警察庁もそれは明らかだと。ただ、事態はこれで収まりますか。

 私達の取材では、事態はさらに複雑で多岐に渡っています。こちらは、本田被告が北海道の記者にあてた文書です。そこには「鹿児島県警の闇」と題して、複数の内部情報が記されていました。

 枕崎警察署の署員による盗撮容疑事件が隠ぺいされたとするてん末や、霧島警察署の署員が地域住民の連絡先を記した「巡回連絡簿」を悪用して一般の女性に迷惑行為を行ったが、被害者が立件を望まず、捜査が終結したといった内部情報もありました。

 この文書が記者に届いたとき枕崎署員は、まだ逮捕されておらず、霧島署員の件も発表されていませんでした。これは情報漏えいではなく、所属する組織の違法行為を報道機関などに知らせ被害の拡大を防ぐ、「公益通報」にあたるのではないか。
文書を受け取った記者、小笠原さんはそう主張しています。

【本田被告から文書を受け取った小笠原記者】
 「1枚目にこういう感じで闇を暴いて下さいという文言が書いてあって、この言い回しから言って、発表されていない企業や役所の不祥事を調べてほしいというメッセージなんだろうと受け止めました」「公益通報を狙い撃ちにしてるというか自分たちの都合の悪い情報を出す奴はけしからんと、逮捕自体が不正だと思います」

 一方、県警側は、「事実でない前刑事部長の名誉を害するような内容や、公表を望んでいない被害者の個人名などが記載されている」として公益通報には当たらないとしています。

 この公益通報かどうかの判断とは別に今、情報流出をめぐる鹿児島県警の捜査のあり方にも、非難の声が上がっています。

 曽於警察署の巡査長が「告訴・告発事件処理簿一覧表」を外部に漏らしたとして逮捕・起訴された事件で、県警は4月、福岡のウェブメディア「ハンター」に家宅捜索を行いました。ハンターの代表は報道機関への捜索差押えは不当なうえ、押収されたパソコンから同意を得ずにデータを消去されたなどとして、県警に「苦情申出書」を提出しています。

 ジャーナリストや小説家などで構成される日本ペンクラブも「報道機関への情報提供を強制捜査の対象にしたことは民主主義社会の根幹を脅かす極めて深刻な事態」として、捜査手法を強く非難しています。

 
「KKBみんながカメラマン」