パチンコ通いで借金400万円超 ギャンブル依存症から抜け出すきっかけは1歳の息子 いまも支援活動続ける男性
プロ野球選手や芸能人の違法なオンラインカジノの利用が相次いで発覚し改めてギャンブル依存の問題に関心が集まっています。
どうすれば抜け出せるのか、ニュースプラスおやっとは経験者の話を聞きました。
ギャンブル依存症家族の会 参加者
「大変なんだよということを分かってもらうために今でもちょっとずつ返済してもらってます。ごめんなさい・・・」
こみ上げる、涙。
話しているのはギャンブル依存症の夫を支える女性です。
先月、ギャンブル依存症の家族を支える人たちが県内外から霧島市に集まり同じ立場だからこそ話せる不安や悩みを打ち明けました。
ギャンブル依存症家族の会
「やっぱり管理してると苦しいですもんね」
「そうなんですよ」「もういい加減やめてって」
「聞くとですね。本人も苦しいらしいですよ。親の目が気になってしょうがないと、本人が1番苦しい」
この日は依存症と向き合う当事者も数人参加。
「わかちあい」と呼ばれる経験者だけで語り合う時間では、ニックネームを使ってお互いの症状を共有しました。
参加者のひとり「ヒロミチ」さんこと山元宏倫さん。
いまは支援する側として家族や当事者のサポートに回っていますが、2年前までパチンコへの依存に苦しんでいました。
つぎこんだ額は1000万円以上にのぼります。
ギャンブル依存症経験者 山元宏倫さん
「よく夜勤明けでここの店舗に足を運んでました。5・6年前ですね」
仕事の夜勤明けも、寝ずにパチンコへ直行していたといいます。
ギャンブル依存症経験者 山元宏倫さん
「眠気覚ましにエナジードリンクとかコーヒーを買ったりとかして向かってました。それがないと眠ってしまうくらい本当はしんどかったんですけど、眠気を勝るくらいギャンブルをしたいという気持ちが強かった」
午前10時の開店から午後10時半の閉店まで、滞在時間は12時間以上ー
トイレに行くのも、食事をとるのも、「時間がもったいない」…
なぜ山元さんがそこまでパチンコにのめり込んでしまったのか。
きっかけは、たった1回の成功体験でした。
ギャンブル依存症経験者 山元宏倫さん
「たまたま2000円くらいで4万円くらいになって、それがきっかけでした」
それは山元さんが22歳のとき。
地元の友人の付き合いで行ったパチンコ店で「大勝ち」。
振り返ってみるとそれが、依存症への入口でした。
ギャンブル依存症経験者 山元宏倫さん
「気づけば週3回ぐらいだったのが毎日行くようになったりとか。仕事が本当は休みなんですけど仕事と言って、嘘をついて行っていたのでギャンブルに費やす時間とか使うお金もどんどん増えていってしまいました」
パチンコ通いは徐々にエスカレート。
1日に10万円ほどつぎ込む日が増え消費者金融5社から400万円を超える借金をしてしまいます。
ついには家族の大切なお金にまで。
ギャンブル依存症経験者 山元宏倫さん
「妻のクレジットカードだったり妻の口座からもお金をおろして、あと子どもの学資保険を解約してパチンコの資金に当ててしまったこともあって」
この頃、山元さんの妻が撮った1歳の息子の写真です。
ギャンブル依存症経験者 山元宏倫さん
「パパ、パパ、いないねぇって。子どもも自分がどこかにいるんじゃないかと思って家の中で探していたみたいで・・・」
「ギャンブルをやめたいのにやめられない」。
自分に起きている異変とようやく向き合えた山元さんは鹿児島市内の病院を受診しました。
アルコール・薬物・ギャンブルといった依存症の治療を専門にしている森口病院です。
田中院長は依存症になりやすい人にある共通の特徴があるといいます。
森口病院 田中大三 院長
「待てなかったりとか、結果を早く求めたいという人が多いかもしれない」
違法なオンラインカジノの利用者が増える理由も、労力をかけず簡単に結果がでてしまうことが背景にあります。
森口病院 田中大三 院長
「ギャンブル場が富士山の山頂にあったとしたら誰も行かないわけですよ。だけれどもそれが手軽にできる。依存症って基本的には人に頼れない病と言われていてどんどんどんどん1人になって孤独になってその行為しか自分を助けてくれものはないみたいな感覚になっていく」
なかなか人に頼れず、孤独のなか、さらにギャンブルにすがってしまう。
その悪循環から抜け出すにはまず、当事者も家族もギャンブル依存を「病気」として捉える必要があります。
森口病院 田中大三 院長
「意志が弱いとかだらしがないとか一般的には言われるんですけどやっぱり1つの病気なんだと」
厚生労働省がおととし実施した調査によると18歳から75歳までの人でギャンブル依存が疑われる割合は全国で1・7%。
ただ、お金のトラブルに巻き込まれた家族や友人はその何倍にもなります。
山元さんの場合は、家族とのつながりが抜け出すきっかけとなり、いまでも支援活動を続ける動機となっています。
ギャンブル依存症経験者 山元宏倫さん
「自分の奥底にあった妻とか子どもを大切にしたいという気持ちとか笑顔が戻ってきたというのを実感している。依存症者が1人救われれば、周囲を巻き込んでしまう病気なので周りの人も笑顔になってくれると思うから、これからも続けていきたい」